ドクターより
杉並区阿佐ヶ谷の歯医者「阿佐ヶ谷ことぶき歯科・矯正歯科」歯科医師の、八尾 翔太(やお しょうた)です。根管治療(歯内療法)は、むし歯が神経まで進行した歯や、根の先に膿がたまってしまった歯を残すための大切な治療です。しかし、歯の根の中は非常に細く複雑で、肉眼や拡大鏡だけでは見えない部分も多く、「経験と勘」に頼らざるを得なかった時代が長く続いてきました。その結果として、「根の治療をしたのにまた痛みが出てしまった」「何度も根管治療を繰り返している」「抜歯と言われてしまった」というケースも少なくありません。

そこで当院では、阿佐ヶ谷エリアでいち早く歯科用マイクロスコープ(手術用顕微鏡)を導入し、根管治療を肉眼の数倍~数十倍に拡大して行う顕微鏡精密根管治療に取り組んでいます。マイクロスコープを活用することで、今まで「感覚」で治療せざるを得なかった根管の内部や、微細なヒビ・分岐・汚染部位を「目で確認しながら」治療できるようになります。阿佐ヶ谷で「できるだけ歯を残したい」「根管治療をきちんとしておきたい」とお考えの方に、マイクロスコープによる精密歯内療法の意義と特長をお伝えできればと思います。
マイクロスコープとは? ― 歯科用手術顕微鏡による精密歯内療法
マイクロスコープ(歯科用手術顕微鏡)とは、肉眼では見えない歯の細かな構造を、数倍~数十倍に拡大して観察できる高性能な光学機器です。医科領域の脳外科・眼科などで広く用いられている手術用顕微鏡と同じコンセプトの装置で、近年、歯科分野でも根管治療や歯周外科、審美治療で欠かせない存在となりつつあります。
歯の中の根管は、直径が0.1mm台という非常に細い世界で、枝分かれや湾曲、石灰化など個体差も大きく、肉眼では「あるかどうか」すら分からないような部分も多く存在します。マイクロスコープを使うことで、こうした複雑な根管内を拡大・照明しながら丁寧に観察・治療することが可能になります。
肉眼のみの根管治療の限界 ― なぜ再発が起こるのか
従来型の根管治療では、レントゲンや触診の情報をもとに、歯科医師の経験と勘を頼りに治療を行わざるを得ない場面が多くありました。その結果、「痛みは一時的におさまったものの、数年後に再び腫れてきた」「何度も根の治療を繰り返している」という状況が生じることがあります。
見落とされがちな「追加根管」「分岐根管」
上顎第一大臼歯のMB2根管に代表されるように、一見1本の根に見えても、実際には複数の根管が存在することは珍しくありません。肉眼では発見が難しいこうした根管が見落とされると、そこが感染源として残り、再発の原因となることがあります。
微細な破折・穿孔・汚染部位の把握不足
歯根に入った微細なヒビ(クラック)や、過去の治療による根管の穿孔、器具破折なども、肉眼だけでは正確な位置や範囲を把握しづらく、適切な対応が難しくなることがあります。こうした見えない問題が、慢性的な違和感や根尖病変の再発につながることもあります。
マイクロスコープを用いた顕微鏡精密根管治療のメリット
マイクロスコープの導入により、従来の根管治療と比べて、診断・治療の精度が大きく向上します。ここでは、阿佐ヶ谷の当院で行う「マイクロスコープを用いた歯内療法」の主なメリットをご紹介します。
1. 見えなかった根管・分岐の「可視化」
マイクロスコープにより、追加根管や分岐根管、石灰化で狭くなった根管などを、拡大視野で確認しながら探索できます。これにより、感染源の取り残しを減らし、根管治療の成功率を高めることが期待できます。
2. 感染部位をピンポイントで除去できる
視野が拡大されることで、感染した象牙質や汚染物質を必要最小限の切削で選択的に除去し、健康な歯質をできるだけ残すことが可能になります。これは、歯の寿命そのものを延ばすことにもつながります。
3. 根管内の状態を「目で確認」しながら治療
根管内の段差(ステップ)や器具の破折、穿孔の有無などを直接確認しながら治療できるため、状況に応じた適切な対応がとりやすくなります。「どこまできちんと洗浄できているか」「どの範囲まで拡大すべきか」といった判断も、より客観的に行うことができます。
4. 治療の記録・説明にも役立つ
マイクロスコープで撮影した画像や動画を保存することで、治療の記録として残すことができます。必要に応じて、患者さんに実際の治療画像をお見せしながら説明できるため、「何をされているか分からない」という不安の軽減にも役立ちます。
ラバーダム・CTとの併用でさらに精度の高い歯内療法に
マイクロスコープだけでなく、ラバーダム防湿や歯科用CTと組み合わせることで、根管治療の精度と安全性はさらに高まります。
ラバーダム防湿で「無菌的環境」を確保
マイクロスコープ下での根管治療では、ラバーダムによる防湿がほぼ必須と言えます。唾液による細菌汚染を防ぎ、洗浄液や細かい器具の誤飲・誤嚥リスクを減らしながら、清潔なフィールドで治療を進めることができます。
歯科用CTで三次元的に根管形態を把握
歯科用CTは、二次元のレントゲンでは分からない根管の湾曲・分岐・根尖病変の広がりなどを三次元的に把握することができます。マイクロスコープとCTを組み合わせることで、「見える情報」と「立体的な情報」を統合した精密診断・精密治療が可能になります。
マイクロスコープを用いた精密根管治療が特に有効なケース
すべての根管治療でマイクロスコープが有効ですが、特に次のようなケースでは、その真価を発揮します。
- 過去に根管治療を行っているが、痛みや腫れが再発している歯
- レントゲンやCTで根尖病変(根の先の膿)が確認される歯
- 追加根管や分岐根管の存在が疑われる大臼歯
- 根管の石灰化が進んでおり、根管口の探索が難しい症例
- 器具破折や穿孔など、通常の治療では対応が難しいトラブルが起きている歯
- 前歯など審美的に重要な部位で、可能な限り歯を残したいケース
マイクロスコープを用いた根管治療の流れ
阿佐ヶ谷の当院で行う「マイクロスコープを用いた歯内療法」の一般的な流れをご紹介します。症例により前後することはありますが、基本的には以下のようなステップで進みます。
- カウンセリング・検査
現在の症状やこれまでの治療歴をお伺いし、レントゲン・必要に応じてCTを撮影して、根の状態・骨の状態・根尖病変の有無などを確認します。 - 治療計画の説明
マイクロスコープの使用目的・治療回数の目安・費用・考えられるリスクや限界について、画像をお見せしながら分かりやすくご説明します。 - ラバーダム防湿・マイクロスコープのセットアップ
ラバーダムを装着して治療する歯を隔離し、マイクロスコープを適切な位置にセットします。 - 根管内の清掃・形成・洗浄
マイクロスコープで根管口や分岐部を確認しながら、専用の器具と洗浄液で根管内の感染源を丁寧に除去します。 - 根管充填
十分な清掃・消毒が完了したことを確認した上で、根管内を充填材で隙間なく封鎖します。 - 最終的な修復(詰め物・被せ物)
根管治療後、歯の強度や噛み合わせを考慮しながら、詰め物・被せ物でしっかりと修復します。 - 経過観察・メンテナンス
レントゲンやCTで根尖病変の改善具合を確認しながら、定期的なメンテナンスで再発予防に取り組みます。
よくあるご質問(マイクロスコープによる根管治療)
Q. マイクロスコープを使うと痛みは少なくなりますか?
マイクロスコープ自体が痛みを直接減らすわけではありませんが、視野が拡大されることで、不必要な部分を削らずに済み、より丁寧で確実な処置が可能になります。当院では、十分な麻酔や痛みに配慮した手技と組み合わせることで、できるだけ負担の少ない治療を心がけています。
Q. すべての根管治療でマイクロスコープを使いますか?
基本的には、根管治療や精密なレジン修復など、拡大視野が有効な処置に積極的に用いています。一方で、歯の位置や口の開き具合など、状況によってはマイクロスコープの使用が難しいケースもあります。その場合でも、拡大鏡やラバーダムなどを併用し、可能な限り精度の高い治療を行います。
Q. マイクロスコープを使うと治療費は高くなりますか?
マイクロスコープを用いた根管治療は、高度な設備と時間・技術を要するため、自費診療となるケースもあります。保険診療との違いや費用については、事前に丁寧にご説明いたしますので、ご不明な点は遠慮なくお尋ねください。
阿佐ヶ谷で顕微鏡精密根管治療をご検討中の方へ
「何度も根の治療を繰り返している」「抜歯しかないと言われた」「できるだけ歯を残したい」とお悩みの方へ。マイクロスコープを用いた顕微鏡精密根管治療は、すべての歯を救える魔法の治療ではありませんが、従来の根管治療では限界のあった歯を守れる可能性を広げてくれる有力な選択肢です。阿佐ヶ谷の当院では、マイクロスコープ・ラバーダム・CTを活用した精密歯内療法に取り組み、1本1本の歯の状態や将来のリスクを踏まえながら、最適な治療方針をご提案しています。
「自分の歯がマイクロスコープによる治療の適応か知りたい」「他院での根管治療がうまくいかず困っている」など、ご相談だけでも構いません。まずは一度、現在の状態を一緒に確認し、考えられる選択肢についてお話ししてみませんか。
