ドクターより

メッセージ

杉並区阿佐ヶ谷の歯医者「阿佐ヶ谷ことぶき歯科・矯正歯科」歯科医師の、八尾 翔太(やお しょうた)です。「歯の神経を取る治療」「根の治療」と聞くと、痛い・時間がかかる・何度も通うというイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし、適切な歯内療法(根管治療)は、歯を抜かずに残すための“最後の砦”ともいえる重要な治療です。歯髄は、歯に栄養や水分を届け、温度や痛みを感じるセンサーとしての役割を担っています。

その歯髄が、むし歯や外傷によって細菌に感染すると、激しい痛みや腫れを生じるだけでなく、放置すれば歯を失う原因となります。歯内療法は、こうした感染した歯髄や根管内の細菌を丁寧に取り除き、再び細菌が入り込まないように密封することで、歯を長期的に保存することを目指す治療です。当院では、マイクロスコープや歯科用CT、ラバーダム防湿などを活用し、阿佐ヶ谷エリアでも数少ない「精密歯内療法」に取り組んでいます。「できるだけ自分の歯を残したい」という方は、一度ご相談ください。


歯内療法(根管治療)とは

歯内療法(Endodontic treatment)は、歯の内部(歯内)にある歯髄や根管を対象にした治療の総称です。細菌に汚染された歯髄を除去し、根管内を清掃・消毒した上で、薬剤で緊密に封鎖することで、痛みや炎症を鎮め、歯をできるだけ長く機能させることを目的とします。

一般的には「根管治療」「神経の治療」と呼ばれますが、その実態は非常に繊細で、精度の高い操作が求められる専門性の高い治療です。根管の内部は直径0.1〜0.2mmほどと非常に細く、枝分かれや湾曲、追加の根管(副根管)が存在することも多く、肉眼だけで完全に把握することは困難です。そのため、マイクロスコープなどの拡大視野を用いた精密な歯内療法が、再発リスクの低減に大きく関わってきます。

歯髄(歯の神経)の役割

歯髄は単なる「痛みを感じる神経」ではありません。歯の内部で複数の重要な機能を担う、生きた組織です。

  • 感覚機能:冷たい・熱い・噛んだ時の違和感などを感知し、歯を守る役割
  • 防御機能:むし歯や刺激に対して象牙質を厚くする「第二象牙質」の形成
  • 栄養供給:歯に血液を供給し、歯質の水分量や弾力を保つ
  • 免疫機能:細菌が侵入した際に炎症反応を通じて対処する

こうした役割から、近年の歯科医療では「できるだけ歯髄を残す」「保存可能な歯髄は温存する」という考え方(Vital Pulp Therapy)が世界的な潮流となっています。しかし、炎症や感染が歯髄全体に及んでしまった場合には、歯内療法によって適切に処置しなければ、歯を守ることはできません。

歯内の病気(歯髄炎・根尖性歯周炎)

歯内療法が必要になる代表的な病気が「歯髄炎」と「根尖性歯周炎」です。どちらも細菌感染が関与しており、進行段階によって症状や治療方針が異なります。

歯髄炎とは

深いむし歯や外傷などにより、細菌や毒素が歯髄に達した状態です。初期の「可逆性歯髄炎」では、冷水痛など一過性の症状が中心で、適切な処置によって歯髄が保存できる可能性があります。しかし炎症が進むと「不可逆性歯髄炎」となり、ズキズキする強い自発痛、夜間の痛み、温水痛などが現れ、歯髄を残すことが難しくなります。

根尖性歯周炎とは

歯髄が壊死し、根管内で増殖した細菌や毒素が、歯の根の先(根尖)から外へ漏れ出て、周囲の骨や歯周組織に炎症を起こした状態です。噛むと痛い・歯が浮いた感じがする・歯ぐきが腫れる・膿が出るなどの症状がみられます。慢性化すると、一時的に症状が落ち着くこともありますが、根尖部に膿の袋(嚢胞)を形成するなど、静かに進行していきます。

歯内療法が必要になる主なケース

以下のような症状・状態がある場合、歯内療法(根管治療)の適応となることが多くあります。

  • 強い歯の痛みが続いている、夜間にズキズキと痛む
  • 冷たいもの・熱いものでしみる痛みが長く続く
  • 噛むと歯が響くように痛い、歯が浮いた感じがする
  • 歯ぐきが腫れてきた、頬が腫れたことがある
  • レントゲンで歯の根の先に黒い影(透過像)が見つかった
  • 過去に神経を取った歯が再び痛み出した、腫れを繰り返す
  • 歯をぶつけた・折れた後から色が変わってきた

こうした症状は、歯髄や根尖部に感染が広がっているサインであり、放置しても自然に治ることはありません。早い段階で歯内療法を行うことで、抜歯を回避できる可能性が高まります。

なぜ歯内療法が重要なのか

歯内療法は、歯を残すか抜くかを左右する「分岐点」となる治療です。適切な根管治療が行われるかどうかは、その歯の寿命に直結します。

1. 自分の歯に勝る人工歯はない

インプラントやブリッジ、入れ歯などの補綴治療は、失った歯を補う非常に有効な手段ですが、感覚や噛み心地、メインテナンスのしやすさなど、あらゆる面で天然歯には及びません。歯内療法によって自分の歯を保存することは、将来的な治療の負担軽減にもつながります。

2. 噛み合わせや全体のバランスを守る

一本の歯を失うと、隣の歯が倒れたり、噛み合う歯が伸びてきたりと、「欠損ドミノ」と呼ばれる連鎖的なトラブルが起こります。歯内療法は、この連鎖を起こさないための重要な防波堤となります。

3. 全身への影響を抑える

慢性的な根尖性歯周炎は、身体のどこかに絶えず炎症源・細菌源を抱えている状態とも言えます。根の治療を適切に行うことで、こうした慢性炎症を取り除き、全身の健康リスクを減らすことにもつながります。

歯内療法の大まかな流れ

詳細な術式や使用器具は専門的になりますが、歯内療法はおおよそ次のようなステップで行われます。

  1. 歯髄・根尖部の状態をレントゲンやCTで精密診断
  2. むし歯や古い詰め物・被せ物の除去
  3. 根管へのアクセスホールを形成(歯の裏側・噛む面)
  4. 感染した歯髄や古い充填材の除去、根管の拡大・清掃・消毒
  5. 根管内部を隙間なく封鎖(根管充填)
  6. 土台の築造と被せ物(クラウン)による歯の補強

根管の形態が複雑であったり、再治療の場合には、複数回の通院が必要になることもあります。阿佐ヶ谷で「根の治療が長引いている」「何度も同じ歯の治療を繰り返している」という方は、一度精密な診断を受けることをおすすめします。

精度の高い歯内療法のために

歯内療法は細かな作業の連続であり、わずかな細菌の取り残しや封鎖不良が、数年後の再発につながることもあります。成功率を高めるためには、「見える治療」「清潔な治療」「確実な封鎖」が欠かせません。

  • マイクロスコープ:肉眼の数倍〜数十倍に拡大し、細かな根管口や亀裂を見逃さない
  • ラバーダム防湿:唾液や細菌の侵入を遮断し、清潔な環境で根管処置を行う
  • 歯科用CT:三次元的に根の形態や病変の広がりを把握する
  • ニッケルチタンファイル:しなやかで折れにくい器具で、湾曲した根管にも追従
  • 高い封鎖性をもつ根管充填材:再感染を防ぐためのすき間のない封鎖

当院では、これらの体制を整えることで、阿佐ヶ谷で「歯を残すための歯内療法」に真剣に取り組んでいます。

阿佐ヶ谷で「歯内療法(根管治療)」をご検討の方へ

「神経を取らないといけないと言われた」「何度も根の治療をしているのに治らない」「抜歯しかないと言われた」といったご相談は少なくありません。しかし、精密な歯内療法によって、まだ保存できる歯も多く存在します。当院では、現在の歯の状態や保存の可能性、今後起こり得るリスクなどを、レントゲン・CT画像を用いて分かりやすくご説明いたします。阿佐ヶ谷周辺で歯内療法(根管治療)についてお悩みの方は、一度お気軽にご相談ください。