ドクターより
杉並区阿佐ヶ谷の歯医者「阿佐ヶ谷ことぶき歯科・矯正歯科」歯科医師の、八尾 翔太（やお しょうた）です。診療台に座ったとき、お口の中に「ゴムのシート」のようなものをはめられた経験はありますか。それがラバーダム（ラバーダム防湿）です。見慣れない器具のため、「何をされているのだろう」「苦しくないだろうか」と不安に感じる方もいらっしゃいますが、実はラバーダムは、患者さんの安全性と治療の成功率を高めるために、とても大きな役割を果たしています。
特に歯内療法（根管治療）やコンポジットレジンを用いたMI治療（できるだけ削らない治療）では、唾液や細菌、呼気中の水分が治療の結果に大きく影響します。ラバーダムを用いることで、お口の中の一部の歯だけを治療のフィールドとして「隔離」し、清潔で乾燥した環境を保つことができます。阿佐ヶ谷の当院では、「根管治療」や「精密なむし歯治療」の際、可能なかぎりラバーダム防湿を行うことを基本方針としています。このページでは、ラバーダムとは何か・なぜ必要なのか・どのようなメリットがあるのかを、患者さんにも分かりやすい形で丁寧に解説いたします。
ラバーダムとは？ ― 歯にかける「ゴムのカーテン」
ラバーダムとは、薄いゴム製またはラテックスフリー素材のシートに小さな穴をあけ、治療する歯にだけ通して固定し、お口の中と治療部位を隔離するための器具です。この操作をラバーダム防湿（ぼうしつ）と呼びます。ラバーダムシートは、専用のクランプ（金属の留め具）とフレームを用いて歯に固定されます。一見少し大がかりに見えるかもしれませんが、慣れてしまえば「水がのどに流れにくい」「薬剤の味がしない」など、患者さんにとってもメリットの大きい装置です。特に根管治療（歯の神経の治療）では、世界的なガイドラインでもラバーダムの使用が推奨されており、もはや「あると良いもの」ではなく「基本的に使うべきもの」と考えられています。
ラバーダムを使う目的 ― なぜ必要なのか
ラバーダム防湿には、歯科医師側・患者さん側の双方にとって、多くの目的と利点があります。とくに根管治療や精密治療の成功率を高める上で、大変重要な役割を担っています。
1. 治療する歯を「清潔な状態」に保つため
お口の中には常に細菌が存在し、唾液や呼気にも細菌や水分が含まれています。根管治療では、歯の内部（根管）をできるだけ無菌に近い状態に保つことが重要であり、唾液が入り込むと、せっかく消毒した根管内が再び細菌で汚染されてしまうリスクが高まります。ラバーダムで治療歯をお口の中から隔離することで、唾液の侵入を防ぎ、細菌汚染を最小限に抑えることができます。これは根管治療や歯髄保存治療の成功率に直結する、大変重要なポイントです。
2. 薬液や器具がのどに流れ込むのを防ぐため
根管治療では、次亜塩素酸ナトリウムなどの洗浄液を用いて根管内を清掃します。ラバーダムがない状態でこれらの薬剤がのどに流れ込むと、刺激感・不快感の原因になるだけでなく、誤嚥や誤飲のリスクにもつながります。また、細い根管用ファイルや小さな器具・仮封材などが万が一外れた際にも、ラバーダムが「安全ネット」として働き、のどに落ちてしまう事故（誤嚥・誤飲）の予防にもなります。
3. コンポジットレジン修復などで「乾燥環境」を維持するため
コンポジットレジン（白い詰め物）は、歯とレジンが接着剤を介して強くくっつくことで、その性能を発揮します。しかし接着操作は水分や唾液に非常に弱く、わずかな湿りでも接着力が低下し、将来的な脱離や二次むし歯（再発むし歯）の原因になることがあります。ラバーダム防湿によって歯を乾燥状態に保つことで、コンポジットレジンの接着力を最大限に引き出し、長持ちする修復が期待できます。当院のMI治療（最小限の切削で白い詰め物を行う治療）の質を支える重要なツールです。
ラバーダムを使うメリット（患者さん側の利点）
ラバーダムは歯科医師のためだけの道具ではありません。患者さんにとっても、数多くのメリットがあります。
- のどに水や細かな削りカスが流れ込みにくく、むせにくい
- 薬液の味や匂いを感じにくく、不快感が軽減される
- 口を大きく開け続けなくても、シートが頬や舌をガードしてくれる
- 治療部位以外が守られるため、器具が舌や頬に当たるリスクが減る
- 治療時間の効率が良くなり、診療チェアに座っている時間が短縮されることがある
- 結果として、治療の成功率が高まり、再治療のリスクを減らせる
阿佐ヶ谷の当院でも、「最初は違和感があったけれど、慣れるとこちらの方が楽」「薬の味がしないので助かる」といったお声を多くいただいています。
ラバーダム装着の流れと、つけたときの感覚
「ラバーダムをつけると苦しくないですか？」「息はできますか？」というご質問をよくいただきます。ここでは、装着の流れと実際の感覚についてご説明します。
ラバーダム装着の一般的な流れ
- 治療する歯と周囲の状態を確認し、適切なクランプ（留め具）のサイズを選択します。
- ラバーダムシートに小さな穴をあけ、治療する歯の位置に合わせて準備します。
- 歯にクランプを装着し、その上からラバーダムシートをかぶせて固定します。
- シートの周囲を整え、必要に応じてフレームに張って位置を調整します。
- シートの上から治療する歯だけが見える状態になったら準備完了です。
ラバーダムをつけたときの呼吸について
ラバーダムは口の周りにシートを広げますが、鼻は完全に開いていますので、多くの方は「鼻呼吸」で普段通りに息をすることができます。もし鼻づまりなどがある場合は、事前にお申し出いただければ、状態に応じて対応を検討します。
違和感は？ 苦しくない？
初めての方は、口の周りにシートがかかることで多少の違和感を覚えるかもしれませんが、数分ほどで慣れてしまう方がほとんどです。途中で「苦しい」「つらい」と感じた場合は、すぐに合図をしていただければ、一旦中断して調整を行います。
ラバーダムが特に重要になる治療
すべての処置でラバーダムが必須というわけではありませんが、特に次のようなケースではラバーダム防湿が強く推奨されます。
根管治療（歯内療法）
歯の内部の神経や根管を治療する歯内療法では、根管内をできるだけ清潔・無菌に近い状態に保つことが何より重要です。ラバーダムなしで根管治療を行うと、唾液中の細菌が根管内に入り込み、感染源が残ってしまうリスクが高まります。そのため、世界的な歯内療法のガイドラインでもラバーダムの使用が推奨されています。
コンポジットレジンを用いたMI治療
歯をできるだけ削らずに白い詰め物で修復するMI治療では、接着操作の成功が予後を左右します。唾液や湿気は接着の大敵であり、ラバーダムによる乾燥環境があることで、接着力の安定・治療の長持ちが期待できます。
歯髄保存治療
神経をできるだけ残すための歯髄保存治療でも、細菌汚染を避けることが重要です。ラバーダムを用いることで、清潔なフィールドを維持しながら、神経を残す治療の成功率向上に貢献します。
ラバーダムに関するよくある不安・ご質問
Q. ラバーダムは必ずしなければいけませんか？
根管治療や精密なレジン修復など、治療の成功率に大きく影響する処置では、基本的にラバーダム防湿を行うことをおすすめしています。一方で、口腔内全体の状態や歯の位置・おからだの状態によっては、装着が難しいケースもあります。その場合は、他の方法でできる限りの防湿・安全対策を行いながら治療を進めます。
Q. 見た目が少しこわいのですが…
シートや金属のクランプを見ると、最初は驚かれるかもしれませんが、実際に装着してみると「思ったよりも違和感が少なかった」「水がのどに流れてこなくて楽だった」と感じる方が多いです。ご不安な場合は、装着前に模型やイラストを用いて、どのような器具なのかご説明します。
Q. ラバーダムを使うと治療費が高くなりますか？
保険診療の範囲内で行うか、自費診療で行うかは、治療内容や医院の方針によって異なります。当院では、ラバーダム防湿の必要性や費用については、事前にきちんとご説明し、ご納得いただいた上で進めてまいります。
阿佐ヶ谷で「ラバーダムを使った精密治療」をお探しの方へ
「根管治療を何度も繰り返している」「できるだけ歯を長持ちさせたい」「精密な治療にこだわりたい」とお考えの方にとって、ラバーダム防湿は非常に重要なキーワードです。阿佐ヶ谷の当院では、ラバーダムを用いた根管治療・歯髄保存治療・MI治療など、歯を守るための精密な治療を大切にしています。ラバーダムとは何か、どのようなメリットがあるのかを十分にご理解いただいた上で、一人ひとりに合った治療計画をご提案いたします。
「ラバーダムを使った根管治療について詳しく知りたい」「自分の治療にラバーダムが必要か相談したい」といったご希望があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。現在のお口の状態や治療の選択肢について、分かりやすくご説明いたします。